日本のギターブランドだって負けてないぞ!(フジゲン編:その1)

日本のエレキギターの中心的存在

日本のエレキギターの歴史を語る上で、一番外せないメーカーと言えばフジゲンでしょう。
フジゲン自体の名前はそれほど一般的ではないので、初めて名前を知る方もいらっしゃるかも知れません。
しかし、日本のエレキギターの歴史の中で、フジゲンが果たしてきた役割は、決して小さなものではないのです。

フジゲンは、長野県松本市に本社を置く楽器製造メーカーで、1960年(昭和35年)『富士弦楽器製造株式会社』として発足したのが最初です。
社名の富士は、日本一になりたいという願いを込めて付けられたものでした。
設立当初はクラシックギターの製造が主でしたが、1960年代後半からフェンダーやギブソンのコピーモデルをメインとしたアイバニーズ(星野楽器)、グレコ(神田商会)などの製品を製造するようになっていきます。

コピーモデルの生産で飛躍

コピーされた側のフェンダーとギブソンは当初静観の構えを見せていましたが、やがて日本メーカーの精度の高いコピーモデルが、本家を品質で上回るようになり、元々価格もかなり安かったことで大きくシェアを伸ばしていきます。
これに慌てたギブソンが1977年に訴訟を起こすのですが、その時点で既にフジゲンが日本国内におけるギブソン関連の商標登録を済ませてしまっており、逆にギブソン側が不利となって、なんと最終的には事実上ギブソンが敗訴する結果(商標を全てギブソンに戻すことと引き換えに、損害賠償などは行わないという内容の和解)となります。
コピー製品が横行する今の中国のような話ですが、過去の日本にも似たような話があったんですね。
確かに、私が子供だった1970年代の日本人に対する欧米人の評価は、「日本人は猿真似だけは上手い」とか「エコノミック・アニマル」とか批判的なものが多かったように思いますから、ギターに限らずコピー製品が多かったのでしょう。

フェンダージャパン設立

ただ、この訴訟をきっかけにして、日本国内でもモラルを問う声が高まるようになり、アイバニーズやグレコも製品デザインを変更し、特にアイバニーズはその後に発売したRGシリーズが、大ヒット製品となります。
そして、ギブソンと同様にコピーモデルに苦しめられていたフェンダーが、当時としては画期的な判断を下してフェンダージャパンを山野楽器、神田商会、フジゲンとともに設立します。

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FgN(FUJIGEN) フジゲン EFL-FM Emerald Blue

この頃のフジゲンは、日本の経済成長の波に乗って驚異的なギター生産数の伸びを示し、ついに1983年には世界一の出荷本数を誇るようになります。
最初は日本一を目指した会社が、あっという間に目標を追い越して世界一を達成するなんて、なかなか今の日本では考えられない痛快な話ですね。
1985年にフェンダーが工場を失った時には、工場を再び立ち上げるための技術支援を行っていますし、工場が本格的に稼働し始めるまでの間(1984年~1987年)は、全てのフェンダー製ギターをフジゲンが生産しています。
また、1987年にフェンダーと共同でフェンダー・メキシコを設立し、翌88年にはギブソンと和解して「オービルbyギブソン」やエピフォンのインペリアルシリーズも設立。
まさに破竹の勢いでした。

バブル崩壊で苦境

しかし、祇園精舎のなんとやらではありませんが、フジゲンの絶頂期はそう長くは続かず、バブルの崩壊と共に経営は苦しくなっていきます。
1990年代に入ると、人件費の安い新興国の製品にシェアを奪われ始め、フェンダー・メキシコに対する設備投資の負債が膨らんでいき、経営を圧迫。
フェンダーとの共同子会社であったハートフィールド社も倒産し、エピフォンのインペリアルシリーズも製造中止へ追い込まれ、ついに1997年、フェンダージャパンとフェンダー・メキシコの株を売却。
これにより、会社組織としてのフェンダージャパンは消滅します。
ギブソンとの共同ブランドであったオービルbyギブソンもこの頃に解散していますね。
フェンダージャパンブランド自体は神田商会がライセンス認可を受けて存続させますが、フジゲンはこの時にフェンダージャパンの製造からは撤退していますので、かなりの窮地だったのでしょう。

自動車のウッドパネル生産で業績回復

でも、捨てる神あれば拾う神あり。
2000年からは、高い木工技術を生かしてトヨタ自動車のウッドパネル生産を手掛けるようになり、徐々に業績を回復させることに成功。
今ではギターよりも自動車部門の方が売り上げが大きくなっているようですね。
現在のフジゲンのギター製造部門は、アイバニーズの高級機種を中心に、他社ブランドのOEM生産を多く行っています。
島村楽器のHISTORYやCoolZなども、フジゲン製ですね。
そして、生産本数は多くないものの自社ブランドのギターも生産しています。

サークル・フレッティング・システム

近年のフジゲン製ギターは、サークル・フレッティング・システム(C.F.S)という特許技術が特徴的。
ギターの弦の間隔というのは、ナット部分で狭く、ブリッジ部分で広くなっていて、若干ですが扇状に広がっています。
そのため、通常のフレットでは、1・2弦や5・6弦は直角ではなくやや斜めに弦と接触する形になるのですが、このC.F.Sはフレットを円弧状にすることで弦とフレットが直角になるようにしたのです。
これにより、どの弦を弾いても抜けの良い音を実現している訳なのですが、こういう細かい部分に技術力を注ぎ込むところなんか、非常に日本のメーカーらしさを感じる点ですね。
多分、こんなめんどくさい事、アメリカのメーカーはやらない気がする。(笑)
(注:島村楽器のHISTORYやCoolZにはC.F.Sが採用されていますが、アイバニーズのギターにはC.F.Sは採用されていません。)

しかし、このC.F.Sには弱点もあります。
それはリペアの問題です。
フレットは使用していると減ってくるものですので、長く使ってれば打ち直す必要性が出てきます。
この時、通常のフレットであれば近くのリペアショップに頼めばいい話なのですが、C.F.Sのリフレットは基本的にフジゲンしか行うことが出来ません。
まあ、日本国内であれば、ギターを買った楽器屋さん経由でフジゲンに送ればいいですし、買った楽器屋さんが潰れたりしていた場合でも、フジゲンに直接相談すれば何とかなるでしょう。
しかし、海外の場合はちょっと大変。
フジゲンに送るにしても、時間や送料などがかなりかかるし、配送に時間がかかると破損する可能性も高くなる。
こういう事から、海外での使用を想定されている方には、C.F.Sを採用しているギターはあまりオススメ出来ないのです。
きっとこれが理由で、海外にも多く輸出されているアイバニーズのギターには、C.F.Sが採用されていないんでしょうね。

ウェブ・オーダー・システム

あと、個人的に非常に良いなと思うのがウェブ・オーダー・システムです。
フジゲンのギターは、既存のラインナップモデルを基にしてカラーや仕様を変更できるカスタムオーダーをネットで行えるのですが、これが安ければ20万円未満で買えてしまうのです。
ギターはどうしても個体差がある製品なので、出来るだけ実際に音を鳴らしてから買った方が良いと言われますが、フジゲンのギターは品質管理がしっかりしているので、個体差は最小限度に抑えられています。
極端な話、楽器店でフジゲンのギターを試奏して気に入ったら、それと似た仕様のギターをオーダーすればOKと言えなくもありません。(多少は個体差があるので、その部分は折り込んでおく必要はありますが・・・)
アイバニーズの上位機種を生産しているメーカーのカスタムオーダー品だと考えれば、かなり格安な設定なんじゃなかいと思いますよ~。

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