スピーカーユニットの基礎知識(その1)

以前、ギターサウンドの50%はキャビネットで決まるという事を書いたことがありますが、当然キャビネットで最も重要なパーツはスピーカーユニットです。
市販されているキャビネットをそのまま使用するのであれば、アンプの出力に対するキャビネットの許容入力値とインピーダンスに気を付けておけば問題なく音は出せるので、別にスピーカーユニットについて細かい知識を持つ必要はないと言えばないのですが、やっぱりギターの音にとことんこだわるなら、知識はあった方が有利なのは間違いありません。
ということで今回はスピーカーユニットについて、少し掘り下げてみたいと思います。

JENSEN ( ジェンセン ) / C8R-8

スピーカーは大きい方が良いのか?

ギターアンプに使用されるスピーカーの口径は、主に8インチ・10インチ・12インチ・15インチの4種類があります。
この中で、ライブステージ上で使用されるのは10インチと12インチが主流となっています。
一般的に、スピーカーは口径が小さいほど高音の再現性に優れ、大きいほど低音をしっかりと鳴らすことが出来ます。
これは何故かというと、スピーカーというのはボイスコイルと呼ばれるパーツによって音を発生させ、それを振動板に伝える構造になっているのですが、ボイスコイルはスピーカーの中心にあるので、コイルに近い振動板の中心部分には敏感に振動が伝わり、中心から離れるほど細かい振動は伝わりにくくなるという特性があります。
つまり、中心に近いところほど高音の再現性に優れており、遠いところほどゆっくりとした低音の振動がはっきりと出てくるという訳なのです。
小口径のスピーカーの場合、振動板が中心に近い部分しかないため、高音はちゃんと出るけど低音はあまり出てこないということになるんですね。
じゃあ単純に言って、大口径のスピーカーなら高音から低音まで全部出るんじゃないの?と、思いますよね。
私は思いました。(笑)
しかし、大口径のスピーカーは確かに低音はしっかりと鳴るものの、高音域に関しては共振が発生して歪みや音質の劣化が発生してしまうのです。
また、大口径のスピーカーは重量もあるため、アンプの出力が小さいとちゃんと振動板を振動させられない為、非常に効率が悪くなるという面もあります。
ということで、スピーカーというものは、口径が小さすぎると低音が出ないし大きすぎると高音が劣化するし効率も悪い、と覚えておきましょう。
10インチと12インチくらいの大きさのギター用スピーカーは、ギターが出す音に対して、高音も低音もバランス良くカバーするように設計されているので、よく使われるという事なんですね。

スピーカーの数

スピーカーの数が多いほど、「音圧」が高くなります。
空気を振動させる面積が大きくなるので、音量が大きくなったように感じられるのです。

ただし、スピーカーの数が多ければ何でもいいという訳ではなく、多くのスピーカーをしっかり鳴らすには当然それなりに音量が必要になります。
小さな会場などで、それほどの音量が必要でない場合は1~2発で十分ですし、そういうところに大きなキャビネットセットを持ち込んでも、むしろ機材の実力を発揮できずに逆効果となってしまいます。
従って、用途にあった適切な設定をすることが重要なんですね。

許容入力について

スピーカーには許容入力値というものが設定されており、必ず接続するアンプの出力値以上にしなければなりません。
例えば、50W出力のアンプに許容入力値30Wのスピーカーを接続すると、スピーカーが負荷に耐えられずに壊れてしまうのです。
許容入力値は、スピーカーの数に比例するので、50Wのアンプに対しては30Wスピーカーを2発使うと許容入力値は60Wとなって、条件を満たすことが出来ます。
また、ここで注意が必要なのは真空管アンプを使う場合です。
ソリッドステート(トランジスタ)アンプやデジタルアンプですと、スピーカーの許容入力値がアンプの出力値以上であればそれで良く、2つの値がほぼ同程度でも問題はありません。
ですが、真空管アンプはアンプの出力値以上の負荷がスピーカーに対してかかるので、許容入力値はかなり余裕を取っておかなければなりません。
目安としては、アンプの出力値の2倍程度に許容入力値を設定しておけば良いと言われています。

インピーダンスについて

スピーカーにはインピーダンスという数値も設定されていて、ギター向けのスピーカーに主に使用されるインピーダンスは4Ω・8Ω・16Ωのいずれかとなっています。
インピーダンスに関しては、以下の点に注意しておきましょう。

アンプよりスピーカーのインピーダンスを小さくしてはいけない

インピーダンスというのは、あまり専門的な話をすると小難しくなってしまうので割愛しますが、要は建物で言えば出入口の大きさのようなもので、アンプとスピーカーを接続することは、その出入口を使って建物と建物の間に通路を作ることだと思って下さい。
アンプとスピーカーキャビネットを接続する際には、このインピーダンスの数値を揃えておくことが重要となります。
通路の入口と出口の大きさが同じであれば、入口から入った人はスムーズに出口までたどり着けますよね。
しかも、入口でギリギリだった人は出口でもギリギリで、言い方を変えれば、全く無駄のない通り方が出来たと言えます。
もし仮に入口より出口の方が大きくなった場合は、入口をギリギリで通れた人も出口では余裕を持って通れるので、無駄はあると言えるものの、通路が壊れたりはしません。
しかし、入口より出口の方が小さくなった場合は問題です。
入口でギリギリだった人は、そのままでは出口を通ることができず、体をかがめるなどの無理をしなくてはいけませんし、下手をすれば通り抜けられません。
いえ、通り抜けられないで済めばまだ良くて、最悪出口を壊してしまうこともあり得ます。
スピーカーユニットの場合もこれと同様に、想定以上の大きな信号は受けきれないのです。
また、信号を出し切れなくなったアンプ側にも大きな負荷がかかります。
このため、アンプの出力インピーダンス(建物の出口=通路の入口)よりスピーカー側の入力インピーダンス(建物の入口=通路の出口)が小さくなると、故障が発生しやすくなります。
以上のことから、アンプとスピーカーの接続は、必ずインピーダンスを等しくするか、スピーカー側のインピーダンスの方が大きくなるようにしましょう。(これを「ロー出しハイ受け」と言います。)
ただし、スピーカ側のインピーダンスがアンプのそれよりも大きくなり過ぎると、スピーカーの大きな入口に対して小さな信号ばかりが入ってくることになり、結果として音量が小さくなってスピーカーの実力をちゃんと発揮できなかったりするので、可能な限りアンプのインピーダンスとスピーカー(キャビネット)のインピーダンスが同じになるようにしましょう。

インピーダンスがは高い方がいい?低い方がいい?

スピーカーのインピーダンスというのは、高くしても低くしてもしてメリットとデメリットの両方があることを覚えておきましょう。
インピーダンスを高くするのは、通路が大きくなるということであり、背の高い人でも楽に通れるので信号伝達のロスが少なく、効率が良いという事が出来ます。
伝達の効率が良くなると、アンプとスピーカーの距離が離れていても音を出せますし、ケーブルの太さの自由度も増しますので、配線が楽になるなどのメリットがあります。
じゃあ、インピーダンスは高い方がいいのね、という事になりそうですが、そうは問屋がおろさない。
インピーダンスが高いと、効率が良くなる半面、ノイズが混じりやすくなるのです。
高さが50mもあるバカでかい通路を50m級巨人が通ると、巨人の体には空気中のゴミやほこりが沢山当たりますよね。
反対に、小柄な人に合わせた通路をこれまた小柄なアルミン君が通る場合、アルミン君の体に当たるゴミやほこりは巨人に比べて圧倒的に少ない。
ですからインピーダンスを低くすると、効率は悪くなるもののノイズは入りにくい、と言う事が出来ます。
このようにインピーダンスの数値設定にはメリットとデメリットが存在しますが、あまり極端な数値にしない限り実用面で問題にはなりませんので、まあそういうことがあるんだということを知っていれば問題はないと思います。

インピーダンスの計算方法

アンプに複数のスピーカーを接続する場合は、スピーカー部分をひとくくりにしたインピーダンス値を計算する必要がありますが、スピーカーの接続方法によってその計算の仕方が変わります。
まず、スピーカーを直列に接続した場合は、単に個々のインピーダンスを合計すれば総インピーダンス値になります。
例えば、4Ωのスピーカーを4つ直列に接続した場合は、総インピーダンスは16Ωになります。
次に、スピーカーを並列に接続した場合は、個々のインピーダンスの逆数を合計して、その計算結果で出た数値をさらに逆数にすれば良い・・・と、文章で書けばこうなりますが、ちょっと解りにくいですよね。
ギターの場合、アンプにスピーカーを複数接続するときに、基本的に異なるインピーダンスのスピーカーを混ぜて使うことはありませんので、全て同じインピーダンスのスピーカーを使用すると限定できます。
その場合、スピーカー1発のインピーダンス値を接続する数で割ればOK。
16Ωのスピーカーを4発並列接続した場合は、16÷4=4で4Ωとなります。

一般的に、スピーカーを複数接続する場合は、並列に接続するのが基本となります。
直列に接続すると、後ろのスピーカーに入力される信号が前のスピーカーの影響を受けてしまうので、音質的に良くないからです。
なお、市販のキャビネットなどで、モノラル入力が16Ωと4Ωに切り替えられるようになっているものがありますが、あれは4Ωの場合は16Ωのスピーカー×4を全て並列接続、16Ωの場合は2発づつ直列接続(16+16=32Ω)し、さらにそれを並列に接続(32÷2=16Ω)してあるのです。


以上が、スピーカーユニットに関する基礎的なお話となります。
スピーカーに関しては、細かいところまで突き詰めると、どこまで書いても書きたりないくらいに奥の深い世界です。
上に書いたことはあくまで基礎的なことですので、どんなケースでも当てはまるというものではありませんが、ギターを弾く上での知識としてはとりあえず事足りるかと思います。
次回(その2)では、ギターアンプ用の代表的なスピーカーについて書いてみたいと思います!

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