ギブソンを強く意識したテレキャスター・デラックスとテレキャスター・カスタム

フェンダーのテレキャスターと言えば、ザクザクとした金属的なサウンドのシングルコイルPUが特徴ですが、実はそれとは全く異なるコンセプトのテレキャスターが存在しています。
1972年に発売されたテレキャスター・デラックスとテレキャスター・カスタムがそれに当たり、ボディシェイプこそテレキャスターですが、中身は全くの別物と言えるモデルです。

FENDER ( フェンダー ) / American Professional Telecaster Deluxe Shawbucker RW 3CS

レス・ポールを意識した設計

ではどう別物なのかと言うと、明らかにギブソンのレス・ポールを強く意識した仕様になっていることが挙げられます。
通常のテレキャスターは、2基のシングルコイルPUに1ボリューム・1トーンという仕様ですが、デラックスは2ハムバッカーに2ボリューム・2トーンというレス・ポールと同じ仕様、カスタムはフロント:ハムバッカー、リア:シングルPUで2ボリューム・2トーンとなっています。
また、PUセレクターの位置もレス・ポールと同じようにボディ上部に設けられ、トグル・スイッチに変更されています。
さらには、デラックスとカスタムに搭載されたハムバッカーの開発者は、ギブソンのP.A.F.を開発したセス・ラヴァー氏ということですから、いかにフェンダーが強くレス・ポールを意識していたのかが分かりますね。

テレキャスターだけどテレキャスターじゃない?

エレキギターの定番モデルを三つ挙げろと言われれば、普通は「ストラトキャスター」、「レス・ポール」、「テレキャスター」となると思います。(異論は認めます!(笑))
このうちストラトとレス・ポールは、多少の仕様変更はあるものの、基本的なところでは発売当初とあまり大きな変更は加えられていません。
まあ敢えて言うとすれば、ストラトのリアPUがハムバッカーになっているモデルがある程度です。
ストラトの3つのPUが全部ハムバッカーになったりすることはありませんし、反対にレス・ポールにストラトのようなシングルコイル(P-90というシングルを搭載するレス・ポールはありますが、これはストラトのシングルとは明らかに異なる性格のPUです。)を使うことはまず無いのです。
いえ、厳密にはHH配列のストラトはあるにはある(Standard Stratocaster HHなど)のですが、店頭においてあることはあまりないと思われ、一般的にはあまり認知されていないと言えるでしょう。(追記:2017年にAmerican ProfessionalシリーズからHH配列のストラトが発売されました。今後の動きに注目ですね。)

きっと、ストラトはシングルコイル、レス・ポールはハムかP-90というのが、製品の強いイメージとなっていて、そこから外れると「ストラトじゃない」「レス・ポールじゃない」となって、結局売れないのでしょうね。
まあ、テレキャスターにハムバッカーを載せても、どのみち「テレキャスターじゃない」とは言われるのでしょうけど、1972年と言えばフェンダーは効率優先のCBS時代ですから、既にロック向けのギターとしての地位を確立していたレス・ポールに対抗するためには、全くの新モデルで冒険するよりも「テレキャスター」のネームバリューを利用することが効率的と判断されたのかも知れませんね。

ストラトとレス・ポールの欠点をテレキャスター的に改善したモデル

ということで、テレキャスターは、オリジナルとは全く異なる仕様のモデルであるデラックスとカスタムが、亜流ながらもしっかりと認知される形で存在することになります。
実は1981年には両モデルとも不人気モデルとして生産が中止されてしまうのですが、再生産を求める声が高くなり、その後に再生産されるに至っています。
このように需要がなくならなかったのは、恐らくこの2モデルの設計思想が、偶然なのかちゃんと狙ったのかは不明ですが、絶妙なポイントを突いている点が大きいのではないかと思います。

まず、レス・ポールの欠点として挙げられることが多いのが、「ハイフレットが弾きにくい」という点なのですが、デラックス&カスタムはこの欠点を大幅にではないにしろ、それなりには改善できています。
ネックジョイント部はフェンダーとしては通常のボルトオン方式でしたが、それでも一般的なレス・ポールよりはジョイント部の張り出しが小さい為、ハイフレット部が弾きやすくなっています。(近年のレス・ポールはヒールカット加工が施されているモデルもあります。)
また、最近のレス・ポール・スタンダードは、価格的に高いので手を出しにくいということもあって、比較的リーズナブルな値段のフェンダーの方にユーザーが流れたという面もあるかも知れませんね。

次に、ストラトキャスターの欠点として言われることが多いのは、3PUで1ボリューム・2トーンなのは使い勝手が悪い、ストロークするとボリュームやPUセレクターに手が当たって動いてしまう、センターPUがピッキングの邪魔、シングルコイルの音が細い(これはストラトの個性ですけどね)、などがあります。
これらの点に関しても、2ハムバッカー(もしくは1ハム+1シングル)に2ボリューム・2トーン仕様に変更することで、きっちりと改善。
FENDER ( フェンダー ) / American Professional Telecaster Deluxe Shawbucker RW 3CS
言わば、ストラトとレス・ポールの欠点を改善したらこうなりました、的な設計になっているのです。
従って、ストラトとレス・ポールを弾く時に上に書いたようなストレスを感じている方は、テレキャスター・デラックス&カスタムは結構有力な選択肢となるのです。

もちろん、単にレス・ポールを意識しただけのモデルではなく、デラックス&カスタムらしさというのも持ち合わせています。
発売当時に開発された”Cunife”(クニフェ)というハムバッカーは、ワイドレンジ・ハムバッカーとも呼ばれ、ハムバッカーでありながら少しシングルコイルっぽい響きを持っていて、レス・ポールのハムバッカーとはまた違ったサウンド特性になっています。
デラックスは2ハム仕様なので、ザクザクとしたサウンドのテレキャスターらしさは薄れてしまっていますが、カスタムはリアPUが通常のテレキャスターと同じシングルですので、テレキャスターらしい音もちゃんと出せるようになっています。

現行モデルについて

2017年現在の現行モデルとしては、デラックスが、
 ・Classic Series ’72 Telecaster Deluxe
 ・Chris Shiflett Telecaster Deluxe
 ・American Professional Telecaster Deluxe ShawBucker
 ・Vintage Modified Telecaster Deluxe(Squier)
の計4モデル。
カスタムが、
 ・Classic 70s Tele Custom
 ・Vintage Modified Telecaster Custom(Squier)
の2モデルがラインナップされています。

余談ですが、フェンダーはテレキャスターに限らずモデル名にデラックスとかカスタムとかをやたらと付けるので、名前だけでテレキャスター・デラックス&カスタムを判別するのが非常にややこしくなっています。
基本的にはTelecasterの表記よりも後ろにDeluxeやCustomの単語が来ればデラックスorカスタムなのですが、例外的にClassic 60s Tele Customというモデルはテレキャスター・カスタムではなく、ボディにバインディング装飾を施したいわゆるカスタムテレキャスターというモデルになっていますので、注意が必要です。
もう、本当にややこし過ぎる!(苦笑)

次回は、上記の現行モデルの仕様について、掘り下げて行ってみたいと思います!

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