レス・ポールのバリエーションをご紹介するシリーズの第二回!
なお、参考までにこの記事を書いている時点でのおおよその新品価格も書いておきますが、あくまでも参考程度ですので、実際の値段とは異なる場合があることは、ご了承ください。
豊富なレス・ポールのラインナップ(その2)
・レス・ポール・スタジオ(Les Paul Studio)
Gibson USA / Les Paul Studio 2017 HP High Performance Ebony ギブソン
レス・ポール・ジュニアは、スタンダードの廉価版という位置付けデビューしたのですが、大幅な仕様変更を行っているために、サウンドの質が異なるものとなっていました。
つまり、ジュニアはスタンダードの廉価版という意味では、少し意図から外れたものだったのです。
そこで、もっとスタンダードの廉価版としてふさわしい製品の開発が求められ、その結果1983年に作られたのがレス・ポール・スタジオでした。
音質には関係のない装飾部分を廃し、木材のグレードを落としたりすることでコストの低減が図られているのですが、装飾を落としたことでモダンなルックスになり、スタンダードよりもスマートな印象があります。
基本構造はマホガニーバック、メイプルトップ、マホガニーネック。
HPモデルとTモデル
2016年モデルからはスタンダードと同様にハイパフォーマンスモデルのHPと伝統的な仕様のTの2タイプが発売されており、年ごとにモデルチェンジが行われています。
2017年モデルの主な仕様は以下の通りです。
Les Paul Studio 2017 T | Les Paul Studio 2017 HP | |
ボディ | トップ:Aグレードプレーンメイプル バック:マホガニー ウルトラ・モダン・ウェイト・レリーフ | トップ:Aグレードフレイムメイプル バック:マホガニー ウルトラ・モダン・ウェイト・レリーフ ファスト・アクセス・ヒール(ネックジョイント部のヒールカット) |
ネック | マホガニー スリムテーパー | |
指板 | ローズウッド インレイ:アクリル製台形 | ローズウッド インレイ:真珠貝製台形 |
ナット | テクトイド(グラファイト)製ナット | チタン製ゼロ・フレット・ナット |
ピックアップ | フロント:490R(カバード) リア:498T(カバード) | フロント:490R(カバード) リア:498T+(カバード) |
ブリッジ | アルミ製チューン・オー・マチック | アルミ製チューン・オー・マチック(チタン製サドル、ブリッジをスタッドに固定できるロック式機構を採用) |
テイルピース | アルミ製ストップテイルピース | アルミ製ストップテイルピース(スタッドに固定できるロック式機構を採用) |
コントロール | 2トーン2ボリューム(一般的なコイルタップ式)1トグルスイッチ | 2トーン2ボリューム1トグルスイッチ ディップスイッチによる以下の切替機能付き ・ピックアップのタップ/スプリットの切替 ・ハイパスフィルター(高音部の音痩せを防ぐ)のon/off ・過大入力防止機能のon/off |
ペグ | グローバー製ロトマチックタイプ | オートチューニング機能「G FORCE」 |
ケース | LPハードシェル | アルミ製HPハードシェル |
新品の価格は、2017HPモデルで15万~20万円、2017Tモデルで10万~15万円くらいとなっています。
・レス・ポール・トラディショナル(Les Paul Traditional)
Gibson USA / Les Paul Traditional 2017 T Heritage Cherry Sunburst
トラディショナルは、2008年以前に生産していたスタンダードを維持する形で生まれました。
維持とは言っても、木材のグレードなどを現在のスタンダードより少し落としていますので、値段的には少し安くなっていますね。
また、単に旧仕様を維持するのではなく、2015年モデルには自動チューニングシステム「G Force」を採用するなど、進化すべきところはしっかりと進化しています。
今のスタンダードは見た目こそオリジナル・モデルとそれほど変わっていませんが、中身は全くと言っていいほどに変更されています。
レス・ポールにはやっぱり伝統的な音を出してほしいけど、ヒストリック・シリーズはさすがに高すぎる。
かといって今のスタンダードもなんか肌に合わない、という方には求めているものがトラディショナルにあるかも知れませんね。
HPモデルとTモデル
2016年モデルからはトラディショナルもスタンダードと同様にハイパフォーマンスモデルのHPと伝統的な仕様のTの2タイプが発売されており、年ごとにモデルチェンジが行われています。
2017年モデルの主な仕様は以下の通りです。
Les Paul Traditional 2017 T | Les Paul Traditional 2017 HP | |
ボディ | トップ:AAグレードフレイムメイプル バック:マホガニー (ウェイト・レリーフはなし) | トップ:AAAグレードフレイムメイプル バック:マホガニー ファスト・アクセス・ヒール(ネックジョイント部のヒールカット) (ウェイト・レリーフはなし) |
ネック | マホガニー ラウンド | マホガニー ソリスト(ナット幅が広め) |
指板 | ローズウッド インレイ:アクリル製台形 | ローズウッド インレイ:真珠貝製台形 |
ナット | ナイロン製ナット | チタン製ゼロ・フレット・ナット |
ピックアップ | フロント:BurstBucker 1(カバード) リア:BurstBucker 2(カバード) | フロント:BurstBucker 2(カバード) リア:BurstBucker 3+(カバード) |
ブリッジ | ワイヤードABRタイプアルミ製チューン・オー・マチック | アルミ製チューン・オー・マチック(チタン製サドル、ブリッジをスタッドに固定できるロック式機構を採用) |
テイルピース | アルミ製ストップテイルピース | アルミ製ストップテイルピース(スタッドに固定できるロック式機構を採用) |
コントロール | 2トーン2ボリューム(一般的なコイルタップ式)1トグルスイッチ | 2トーン2ボリューム1トグルスイッチ ディップスイッチによる以下の切替機能付き ・ピックアップのタップ/スプリットの切替 ・ハイパスフィルター(高音部の音痩せを防ぐ)のon/off ・過大入力防止機能のon/off |
ペグ | ヴィンテージタイプ | オートチューニング機能「G FORCE」 |
ケース | ハードシェル | アルミ製HPハードシェル |
新品の価格は、2017HPモデルで25万円強、2017Tモデルでで20万円前後くらいとなっています。
・レス・ポール・クラシック(Les Paul Classic)
Gibson USA / Les Paul Classic 2017 T Green Ocean Burst
1991年に生産が開始されたレスポール・スタンダード1960年モデルのリイシューという触れ込みのギター。
2012年に一旦製造が中止されますが、2014年に復活。
この時はスリムな60’sネックを採用し、握りやすくなっているのが特徴的でした。
しかし、最大の謎は57Classicピックアップに電池を内蔵したアクティブブースターを追加していた点。(2015年モデルまで)
2015年モデルは「G-Force」も搭載するなど、どこがクラシックなのか不明すぎる。(笑)
しかし、パッと見はスタンダードとあまり変わらないし、ちゃんとしたギブソン純正品なので、意外と需要が高かったりします。
HPモデルとTモデル
レス・ポール・クラシックは限定モデル除くと2016年モデルがリリースされていない関係上、2017年モデルからハイパフォーマンスモデルのHPと伝統的な仕様のTの2タイプが発売されています。
2017年モデルの主な仕様は以下の通りです。
Les Paul Classic 2017 T | Les Paul Classic 2017 HP | |
ボディ | トップ:Aグレードプレーンメイプル バック:マホガニー 9ホール・ウェイト・レリーフ | トップ:Aグレードフレイムメイプル バック:マホガニー 9ホール・ウェイト・レリーフ ファスト・アクセス・ヒール(ネックジョイント部のヒールカット) |
ネック | マホガニー スリムテーパー | マホガニー ソリスト(ナット幅が広め) スリムテーパー |
指板 | ローズウッド インレイ:アクリル製台形 | ローズウッド インレイ:真珠貝製台形 |
ナット | ナイロン製ナット | チタン製ゼロ・フレット・ナット |
ピックアップ | フロント:’57 Classic(オープンゼブラ) リア:’57 Classic+(オープンゼブラ) | フロント:’57 Classic(カバード) リア:Super ’57 Classic(カバード) |
ブリッジ | ワイヤードABRタイプ亜鉛合金製チューン・オー・マチック | アルミ製チューン・オー・マチック(チタン製サドル、ブリッジをスタッドに固定できるロック式機構を採用) |
テイルピース | アルミ製ストップテイルピース | アルミ製ストップテイルピース(スタッドに固定できるロック式機構を採用) |
コントロール | 2トーン2ボリューム1トグルスイッチ | 2トーン2ボリューム1トグルスイッチ ディップスイッチによる以下の切替機能付き ・ピックアップのタップ/スプリットの切替 ・ハイパスフィルター(高音部の音痩せを防ぐ)のon/off ・過大入力防止機能のon/off |
ペグ | グローバー製ロック式ペグ | オートチューニング機能「G FORCE」 |
ケース | ハードシェル | アルミ製HPハードシェル |
新品の価格は、2017HPモデルで25万円弱、2017Tモデルでで20万円弱くらいとなっています。
・レス・ポール・フェイデッド(Les Paul Faded)
Gibson USA / Les Paul Tribute 2017 High Performance Faded Honey Burst
2016年に4年ぶりにレギュラーラインに復活したフェイデッドは、レス・ポール・スタジオをさらにコスト面でブラッシュアップしたモデルです。
(2016年モデルまではLes Paul Studio Fadedという名前でした。)
ボディの仕上げを安価なサテンフィニッシュにし、木材のグレードやケースなどの付属品を見直すことで大幅なプライスダウンに成功しており、実売価格はTモデルでなんと7万円台という、USA製ギターとしては破格の安さを実現しています。
ギブソン純正のレス・ポールが7万円台とか、少し前なら全く想像できなかったんですけどね~。
HPモデルとTモデル
フェイデッドは、他の主要レス・ポールと同様にハイパフォーマンスモデルのHPと伝統的な仕様のTの2タイプが発売されており、2017年モデルの主な仕様は以下の通りです。
なお、2017年モデルでは”スタジオ”の名称が省かれています。
Les Paul Faded 2017 T | Les Paul Faded 2017 HP | |
ボディ | トップ:Cグレードメイプル バック:マホガニー ウルトラ・モダン・ウェイト・レリーフ | トップ:Cグレードメイプル バック:マホガニー ウルトラ・モダン・ウェイト・レリーフ ファスト・アクセス・ヒール(ネックジョイント部のヒールカット) |
ネック | メイプル スリムテーパー | メイプル ソリスト(ナット幅が広め) スリムテーパー |
指板 | ローズウッド インレイ:アクリル製ドット | ローズウッド インレイ:真珠貝製ドット |
ナット | テクトイド(グラファイト)製ナット | チタン製ゼロ・フレット・ナット |
ピックアップ | フロント:490R(オープン) リア:490T(オープン) | フロント:61R(カバード) リア:61T(カバード) |
ブリッジ | アルミ製チューン・オー・マチック | アルミ製チューン・オー・マチック(チタン製サドル、ブリッジをスタッドに固定できるロック式機構を採用) |
テイルピース | アルミ製ストップテイルピース | アルミ製ストップテイルピース(スタッドに固定できるロック式機構を採用) |
コントロール | 2トーン2ボリューム1トグルスイッチ | 2トーン2ボリューム1トグルスイッチ |
ペグ | ヴィンテージタイプ | オートチューニング機能「G FORCE」 |
ケース | ギグバッグ | HPギグバッグ |
新品の価格は、2017HPモデルで10万円強、2017Tモデルでで7万円前後くらいとなっています。
・レス・ポール・トリビュート(Les Paul Tribute)
Gibson USA / Les Paul Tribute 2017 T Satin Gold ギブソン エレキギター
レス・ポール・トリビュートは、フェイデッドとスタジオの中間的な立ち位置のモデルです。
木材のグレードはスタジオと同等にし、仕上げをフェイデッドのようにサテンフィニッシュにしてあるというイメージですね。
HPモデルとTモデル
トリビュートに関しても、他の主要レス・ポールと同様にハイパフォーマンスモデルのHPと伝統的な仕様のTの2タイプが発売されており、2017年モデルの主な仕様は以下の通りです。
Les Paul Tribute 2017 T | Les Paul Tribute 2017 HP | |
ボディ | トップ:Aグレードプレーンメイプル バック:マホガニー 9ホール・ウェイト・レリーフ | トップ:Aグレードメイプル バック:マホガニー 9ホール・ウェイト・レリーフ ファスト・アクセス・ヒール(ネックジョイント部のヒールカット) |
ネック | マホガニー スリムテーパー | マホガニー ソリスト(ナット幅が広め) スリムテーパー |
指板 | ローズウッド インレイ:アクリル製台形 | ローズウッド インレイ:真珠貝製台形 |
ナット | テクトイド(グラファイト)製ナット | チタン製ゼロ・フレット・ナット |
ピックアップ | フロント:490R(カバード) リア:490T(カバード) | フロント:’57 Classic(カバード) リア:’57 Classic+(カバード) |
ブリッジ | アルミ製チューン・オー・マチック | アルミ製チューン・オー・マチック(チタン製サドル、ブリッジをスタッドに固定できるロック式機構を採用) |
テイルピース | アルミ製ストップテイルピース | アルミ製ストップテイルピース(スタッドに固定できるロック式機構を採用) |
コントロール | 2トーン2ボリューム1トグルスイッチ | 2トーン2ボリューム1トグルスイッチ |
ペグ | ヴィンテージタイプ | オートチューニング機能「G FORCE」 |
ケース | ギグバッグ | HPギグバッグ |
新品の価格は、概ねフェイデッドより1万円くらい高い設定で、2017HPモデルで12万円台、2017Tモデルでで8万円台くらいとなっています。
・レス・ポール・デラックス(Les Paul Deluxe)
Gibson ギブソン レスポールデラックス Les Paul Deluxe 2015 Gold Top
1968年に再生産されたレスポール・スタンダードのピックアップを、ミニハムバッカーに変更して作られたものがレス・ポール・デラックスです。
68年のスタンダード再販時には、ピックアップはシングルコイルのP-90が搭載されていたのですが、クラプトンが使用して賞賛されたスタンダードは、サンバーストカラーの2ハムバッカー仕様のものでした。
当然、ファンからは不評を買う結果となります。
そこでギブソンは、苦肉の策としてP-90を取り付けていたスペースに、強引にミニハムバッカーを取り付けて発売し、デラックスと名付けます。
要するに、スタンダードと同じ生産ライン上で、デラックスを製造したんですね。
デラックス誕生の裏には、生産ラインをもう一度見直す手間やコストを嫌ったとか、ハムバッカーならカスタムに載せてるからそっちを買って欲しいという思惑があったのではないかとか言われています。
このギブソンの姿勢、一見殿様商売のように見えますよね。
しかし、実はそうではないのです。
むしろ、良いギターを作りたいがゆえのジレンマだったのです。
当時すでに、ギターに使える良質でサイズも大きい木材は枯渇していました。
楽器用の良質な木材というのは、木自体の質もありますが、その他にも音の響きを良くするために相当な長期間をかけて乾燥させてあったりしたので、無くなったからといって、おいそれと補充できるものではなかったのです。
でも、楽器メーカー的には音の良い物を作りたい。
そこで、サイズ不足の木材をつなぎ合わせてギターを作ったのです。
このため、シースルー塗装であるサンバーストカラーは見栄えがよろしくない。
でも、カスタムなら単一色で塗りつぶしてしまうので問題ない。
こういう理由もあって、ギブソンはカスタムだけを2ハム仕様にして、その後のレス・ポールの主流をスタンダードからカスタムに移そうとしたようです。
しかし結局は、76年に2ハム仕様のサンバーストカラーのスタンダードが復活し、役目を終えたデラックスは1980年に生産中止となります。
そのギブソンにとっても感慨深いものがあるであろうデラックスが、2015年に自動チューニングシステム「G Force」などの最新技術を搭載して、レギュラーラインに復活しました。
お値段も20万円ほどで、スタンダードよりリーズナブルになってます。
もちろん今のデラックスは、継ぎはぎではありませんよ!
実はまだほかにもレス・ポールのバリエーションはあるのですが、キリがないのでこの辺にしておきます。(笑)
ここに書いてあるもので、主要なところは押さえてあるはずだと思います。
それにしても、レス・ポールって種類が多いですね~。